久しぶりに通訳のアルバイト。
日仏でやっている"L'art de vivre"をテーマにしたブックフェアをやっている関連で
来日したフランス出版国際事務所というところのお手伝いをするというものだったのですが、
いろいろな手違いが重なって、なぜか急遽シンポジウムの通訳をすることに。。。
ほとんど関係者だけとはいえ、公衆の面前で、
しかも仏→日ばかりか、日→仏の両方向の通訳をすることになってしまい、
あー先生ごめんなさいって感じでした(> <;)
それはそうと、内容はなかなか面白かった。
L'art de vivreというのは、生活の中、日常の芸術というような意味で、
料理、観光、モードetc. さまざまな分野に見られるセンス、知恵のようなもの。
これってきっとどこにでもいろいろな形で存在している文化なのだと思うけど、
こういう表現が定着してることを考えても、フランスはやはりすごく意識的といえる。
どんな生き方をしたいか、とか
自分の生活の中にどんな芸術性を見出すことができるか、とか
そういったことにこだわりを持つというのが、ごく自然なこととして浸透している気がするのだ。
それで、いわば生活に彩りを添えるようなことを専門とした企業の人々と
出版社がどのような形でコラボレーションできるか、ということをテーマとしたシンポジウムだった。
・・・というか、実は企業と出版業界のコラボ―たとえば企業がスポンサーになって出版した本に広告を挟む、ロゴを印刷するとか―がテーマになっていただけなのだけど、扱っていた分野がl'art de vivreだったので、この分野を扱うということ自体を前景化して考えてみたわけ。
参加していたのは在日フランス系企業だったのだけど、在日フランス系企業といって思いつく限りの企業が参加していた、という感じで、要するに、日本でいうフランスのイメージはl'art de vivre的な文化だということでしょう。
でも逆にl'art de vivreに敏感なフランスで注目されてるのは、日本の生活習慣の芸術性。
たぶん私たちは普段意識しないけれど日本的な風習というのはたくさんあって、
たとえば「禅=ZEN」の心といったタームが流行っているのも、フランス人がそこに芸術性を見出しているからなのだ。
というわけで、日常の中に芸術性を追究するフランス的な生き方に魅力を感じる日本と、
日本の風習の芸術性に新しい可能性を感じるフランスの文化交流の1つの通路は「生活」にあるのかもしれない。
ただし、生活の中の芸術は、それが日常に溶け込んでこそ魅力を持つわけで、
あまりに豪華で浮いてしまうような、単なる贅沢、であってはいけない。
日本でいうフランスのイメージは、ハイソなものに傾倒しがちな気がするけれど、あくまで「日常」の中にある芸術を「見出す」というところが人生の楽しみ方なんじゃないだろうか。
教養というのも、そういうものなんだと思う。