難関のひとつである。
しかし、今回これだけ私が忠誠心テストを課せられているのは、
私が執拗に「通常」の権利を主張し、異質であるはずの私のノーマライゼーションを要求しているから。
許可証の申請者の立場は低い。
しかもアドミニの理由なきいじめにあったりすると、無力に、
「許可証ちょうだい。いい子にして、言うこと聞くから。」と白旗をあげたくもなる。
そして、それが許可証取得の近道かもしれない。
でも申請者にも、サン・パピエ(不法滞在者)にも、権利というものはある。
だから、たとえば
外国で行われるフォーラムに招待されたので行きたいと思ったとき、
お金を借りずに自力で生活財源を証明したいと思ったとき、
こういうのは波風を立てない申請方法では避けられる手間なわけだけど、
今回、私はフランス式に等身大の存在を主張してみることにしたのだ。
ちなみに波風を立てないとか、凹凸のない、滑らかな状態を表わすlisseという形容詞は
フランスにおける日本社会のイメージに対応する言葉らしい。
滞在許可証の申請に来ている日本人学生の横には、「仲介業者」のひとが付き添っていた。
とても日本人受けしそうな業務である、と思うと同時に、
きっと私の「わがまま」はこういう業者には「前例がありませんね」と嫌がられるのだろうと思った。
でも、これは私の意地である。
私にとって、フランスの滞在を求めるということは、
「正常者」と同等に共存するということにほかならない。
それでも「正常者」になるわけではないから、当然、さまざまな仕方で権利は制限されるだろうし、肩身のせまい思いもするだろう。
でも、自分から凹凸を減らして、平穏を装ってあげなくてもいいのではないか。
権利は主張し、正当であれば認められる、べきなのではないか。
もちろん自分の権利なんて誰も説明してくれないから、
それを主張できるだけしっかり把握するのはけっこう大変である。
でも、自分の権利を知っておくなんてこと、本当は当然のことだ。
それが徹底されにくい体制も徹底されないメンタリティもどちらも問題だとは思うけど...。
そんなわけで、今回私が挑んだ+αのひとつが「労働許可証」の添付。
厚生・労働・雇用省と経済・産業・財務省の共同の管轄下にDireccte(Direction régionale des entreprises, de la concurrence, de la consommation, du travail et de l'emploi:企業、競争、消費、労働、雇用担当地方局)という地方組織があって、外国人学生の労働許可証というのもここが発行している。それ以上詳しいことはわかりましぇん・・・
で、パリのあるイル・ド・フランス県のDireccteはAubervilliersという郊外(我が校の将来の移転先)にあるのだけど、行き方を調べたらなんと、
メトロの駅から連絡船が運航していますと書いてある。
というわけで、乗ってみました。

電気だからとても静か。快適。しかも無料。
申請、受領、更新とやはり何度も通わなくてはならなかったDireccteでしたが、ちょっと楽しい遠出だったのでした。
まあこうやって、フランスの知らない部分に触れたりもするというのは、不思議な縁だけど、
こういう経験を通して、この土地に滞在し、生活するということを体感している気がする。
振り返ってみると2012年は350日くらいをフランスで過ごしたことになる。
それは異邦人としてかもしれない。
それでも居場所をここに拓く必要があったのだ。