2012/04/12

education

前回はセネガルの大統領選の話をしましたが、
大統領選は目下フランスでも話題の中心。
今週から第一回投票に向けての公式選挙期間に入ったからです。

そしたらテレビで面白い番組をやってました。
同世代くらいの子たちが4人候補者として登壇して、
一般教養のクイズに答えたり、候補者同士で討論をしたり、お題を与えられてシミュレーションをしたりしたのちに、最終的に専門家と会場の見学者の投票で未来の大統領・模擬選挙をするという企画。

シミュレーションのお題のなかには、バイオ・テロというのもあって、
大学1~2年生のときの授業で同様のシミュレーションをやったら先生が本物の新聞記者をサクラに連れてきていて、「模擬記者会見」のときに詰問されたことを思い出しました(笑)

それはさておき、そのなかでちょっとした発見だったのが国家予算の話。
一般教養クイズのなかで、国家予算のなかに占める割合が一番高い省庁はどこかという問題があったのだけど、答えはなんと、教育省なのです。

回答した学生は財務・金融と答えていて、私もいまどきそんなイメージ、と思っていたのだけど、会場の「先輩」専門家たちには、常識という風だった。

調べてみたら、だいたい60億ユーロくらいで、
なんと全体の20%くらいを占めている・・・
ちなみに日本はだいたい4兆円台、つまり額にしてフランスの半分強、日本の予算はフランスの倍額近いことを考えると、割合にしたら5%にも満たない。

しかももっと驚くべきことに、フランスには主に教育省とは別に、高等教育および研究を担う官庁まであって、もちろんちゃんと別の予算を持っているのだ。
文化省というこれまたソフトパワー満載の組織が別に存在することはいうまでもなく、です。

そんなフランスでも学問の世界が市場競争の原理にさらされて危機に瀕していることはたしか。

最近は国立図書館のほかに、Bulacという、国立東洋言語文化学院(通称:INALCO)付属の図書館にもよく行くのだけどそこで気になるビラを見つけました。

いわく、INALCOを解体に追いやるSorbonne Paris Citéプロジェクトに反対しよう、と。

このプロジェクトなんだろうと思ったら、大学統合プロジェクトなんです。

大学統合プロジェクトといえば、既にCampus Condorcetという別のプロジェクトがあることは知ってたのだけど、どうも同系のプロジェクトが並行して存在しているみたいで、つまりはパリ中のだいたいの大学がこうして大型プロジェクトに統合されていくという傾向にあるようなのだ。

Campus Condorcetというのは、パリ郊外に建設予定の共同施設を拠点に、多様な分野の研究機関が提携するという企画で、高等研究実習院(EPHE)を筆頭に、その第6セクションが独立した社会科学高等研究院(EHESS)、国立古文書学校、パリ第1大学、第8大学、第13大学、フランス最大の研究機関である国立科学研究センター(CNRS)、エマニュエル・トッドのいる国立人口学研究所(INED)、人間科学研究財団(FMSH)が参加を表明している。ちなみにこれらの機関の経営陣を見てみると、卒業生が行き来していたり、もともとわりと系統は近いのね、という感じ。

一方、この新キャンパス完成の予定となっている2016年を目指したもうひとつのプロジェクトがSorbonne Paris Citéで、こちらの参加校は、パリ第3大学、第5大学、第7大学、第13大学、INALCO、パリ政治学院、パリ地球物理学研究所(IPGP)、公衆衛生高等研究院(EHESP)。

といっても実はCampus Condorcetはその名の通り、新しい拠点の創設とそれによる提携の強化が争点であるのに対して、Sorbonne Paris Citéというのはまさに大学統合で、研究機関の可視化(単純化)による国際競争力の強化を目的とした高等研究機関の極を構築するPRESという国家プロジェクトの一部なので、厳密には並立させて記述するべきじゃないのかもしれないけど、国際競争力の強化、すなわち国際大学ランキングへの反映を大学経営に組み込むPRESというプロジェクト自体が脅威なのはいうまでもなく、やはり拠点の統合という全体的な傾向は簡略化、単純化という方向に進みかねない。

個人的には拠点を郊外に移すこと自体は悪くないと思うのだけど(特にCampus Condorcetに関してパリ大学がソルボンヌという歴史的拠点の喪失を懸念していたり、パリ中心の好立地を手放したくない機関からは反対の声があがていたりする)、それが各機関の個性を奪う危険性を伴うこともたしか。

で、INALCOで見つけたビラにはこう書いてあった。

・このプロジェクトは提携を組んだ機関がまず運営委員会を結成して、最終的には統合された組織のなかに各機関は吸収されていくことになっているが、そもそも各機関を代表しているはずの運営委員にINALCOの代表は含まれていない。(いくつかの企業の代表者がその代わりに参加)
・統合された組織は最終的に4つの分野に分類されることになっていて、なかでも人文学と社会科学が2つの分野を構成しているが、これは言語と文化を包括的に捉えようとするINALCOの教育方針を解体することになる。
・市場原理の導入により、マイナー言語の研究の存続が脅かされる。

なんでINALCOの図書館に私が通っているかというと、アフリカ地域文化研究の資料もたくさん保管しているからなのだけど、これだけ予算が確保されているにも拘わらず、結局フランスでも国際化の波はまぬがれていないということかしら。

文化は市場原理から外すべきだといって「フランス的例外」という特別条項をかつてWTOに提言したフランスなのだけど。
とはいえこのエピソードにはフランスの文化帝国主義の影がぴったりとくっついているのであって、
いまや市場原理に抵抗するには、たとえばアフリカ研究の意義を開発というやはりネオコロニアルな路線に結びつけていくくらいしかないような気すらする。

そもそもINALCOの解体はともかく、東洋言語文化学院(Institut national des langues et civilisations ORIENTALES)っていう名称もなんとかしたほうがいいと思うのだけどね。

2 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

こういうのがあるんだ! やっぱりくっつけないと世界大学番付で上位取れないとか、色々事情があるのだろうね。理系はパリテク
http://fr.wikipedia.org/wiki/ParisTech

petit.printemps さんのコメント...

あ、ちゃんと読んでくれてるひとがいた!理系もあるのね。世界大学番付なんて廃止してしまえばいいのにー(おかげでうちの大学も・・・)