いきなり余談ですが、仕事をあらわすtravailという語は、目的を達成するための人的営為のことを指していて、そのなかに学生の営みも入るというのは面白いなあと思います。
つまり日本語では「勉強する」という表現は、フランス語では「仕事する」と同じ動詞(travailler)で表現されることもある。
もちろん英語のto studyに近いétudierという動詞もあるのだけど、travaillerってそれが物理的であれ知的であれ、一定の作業によって変化を加えるというニュアンスがあるから、もう少し創造性が高い気がする。そして知的作業に関していえば、インプットとアウトプットの両方がうまく融合された表現だなと思うのです。
で、そんな「仕事」に勤しむのは国立図書館。
国立図書館というのは、日本の国会図書館みたいな感じかしら、
とにかくフランス中の出版物のほとんど、約1000万冊がここに所蔵されているので
パリ中の研究者たちが、そして休みになると世界中のフランス研究者たちが集う拠点になっています。
ちなみに私が通ってるのはミッテラン政権時代に企画されて1990年代になってオープンした新館。
フランスは文化政策(つまり文化レベルに国家が大きく介入するということ)の長い歴史を持ってるけど、そのなかでも大きな役割を果たしたのはミッテラン政権下の文化大臣ジャック・ラング氏。
芸術を営むひとにとっては特に、いろんな批判があるのも確かだけど、個人的な概観として、フランスの「文化」の幅がぐっと広がって、新しいものが育つ素地をつくったのは彼の改革によるところが大きいのではないかという気がします。
でもそのラング氏と並んで、大統領自身も文化的なプロジェクトに着手していたことで知られている。
この新館もそのひとつ。他にもルーブルのあのピラミッドをつくったり、バスティーユの新しいオペラ座もやはり大統領プロジェクトの一環で、なんかやっぱり国家権力の顕示という感は否めないよね。
とはいえ、こうして大統領が何か記念建造物を残すというのは、ポンピドゥー以降のしきたりになっているのだけど、それが皆そろって文化施設だというところが、やっぱりフランスのすごさだと思うのだけど。
それでもミッテランのプロジェクトはやはりどこか革新という傾向を貫いているのも確か。
この国立図書館新館の建てられた13区には、パリ大7大学、国立東洋言語文化学院(INALCO)も移ってきて、それに伴って大手の本屋も開店したり、だんだん学生街になりつつあって、
(ソルボンヌを中心にパリ大学が集中する従来の学生街カルチエラタンに対し)新・カルチエラタンを称するようになっているらしい。
新館というからにはもちろん旧館があって、場所も右岸。
もともとはルーブル宮にあった王立図書館が起源で、フランス革命以降王室の財産が国有化されていった流れで国立図書館が組織化されていったというわけだ。
ちなみに旧館は円形の壁にずらりと蔵書の並ぶクラシックな内装なのに対し(左)
新館はドミニク・ペローの設計で、ガラス張り、20階建てというかなりモダンな外観(右)
ところでなんでこの図書館という施設の話をしようと思ったかというと、
フーコーの手稿の所蔵先をめぐって2つの施設が対立しているという記事を目にしたからなんですが。そのうちの1つがこの旧館にフーコー自身が足しげく通ったという国立図書館。
もうひとつが現代出版資料館(IMEC)でこちらも大多数のフーコー・コレクションを持っているとか。
実はこの2つの施設、バルトの手稿をめぐっても対立して軍配は図書館にあがってるんですね。
でもこのまま「内輪もめ」していると、フーコー研究の拠点を築きつつあるアメリカの大学群に「国宝」とられちゃうよっていう記事。
なるほど知的営みも国家の財をなすのだというのがダイレクトに感じられる場なのでした。

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